致し方ないので、上司お持ち帰りしました
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また、詐欺師に騙されかけたことを引きずりながらも、そんな素振りを見せずに仕事は遂行する。
大手食品会社に勤めて6年目。営業部で内勤を担当している。たまに外に出ることもあるが、基本は営業の補佐だ。毎日パソコンと向き合い仕事に追われる日々だが、仕事面では中堅という立場にもなり、それなりに充実していた。
「泉さーん。今日、真白さんの歓迎会ですよね」
「そうだねー」
声を掛けてきたのは、入社二年目の秋月綾乃さん。彼女が新入社員のころ、私が指導を担当した。
はっきり物事を言う性格で「飲み会とか、接待費として時給発生しないのおかしくないですか?」と、飲み会が開催されるたびに口癖のように言っているような子だ。
色白に潤んだ瞳は男子社員を誘惑するようで、秋月さんを狙う男性社員は後を絶たない。
いつもは飲み会と聞くと嫌な顔をするのに、今日の飲み会は違うらしい。声を高らかに弾ませて、鼻歌まで聞こえてくる。
彼女がこんなにも上機嫌な理由は、真白さんの歓迎会だからだろう。
真白桔平さん。人事異動でこの営業部にやってきた。
若くして次の課長候補と言われているやり手のエリート社員だ。長身でスタイルも良く、端正な顔立ちでまさにイケメンというやつだ。
イケメンでエリート。女性社員が放っておくわけがなかった。異動後早々に、社員の女の子たちは目をハートにして喜んでいる。私はもちろん全く眼中にない。
だって、イケメンは100パーセント非童貞。私の恋愛条件はただひとつ。童貞であること。よって、イケメンは自動的に除外されるのだ。