致し方ないので、上司お持ち帰りしました
「この証拠と泉さんの証言があれば、立派な脅迫罪と認定される。ちなみにストーカー容疑は立証されているから」
「はあ? どういうことだよ?!」
真白さんはスマホの画面を差し出した。画面には楓くんが私のアパートの前で待ち伏せしている様子が映し出されていた。
「調べてもらって、ストーカー容疑は立証されている。泉さんの訴えがあれば、晴れてストーカー容疑で逮捕です」
「……なっ」
「それに、お金をだまし取ろうとしたことについて調査されれば、過去の詐欺行為も立証されるのではないか?」
楓くんは唇をぎゅっと噛み締め固まっている。
「……ご、ごめんなさい」
それはギリギリ聞き取れる声量だった。
楓くんは観念したのか、小さな声ですぐに謝った。調査されたくない過去があるのだろう。
「謝るのは泉さんにだろ?!」
「涼香、ご、ごめん」
「……」
謝られたところで、許せるものでない。だけど、これ以上事を荒げたくない私は口を噤んだ。私の代わりに真白さんが言葉を放つ。
「まあ、謝ったところで通報するけど」
「……」
「さっきは魅力のカケラもないとか言ってたな? 泉さんと同じ時間を過ごして。彼女の魅力に気づけないなんて。可哀そうな男だな」
「なんだよ。別に。魅力なんて。ため込んだ金以外ねーだろ?!」
「もういいよ。君に泉さんは勿体ないから。ストーカー行為はもちろん。脅迫罪。詐欺罪。立派な犯罪だからな?! 2度と泉さんの前に現れるなよ?!」
初めてだった。真白さんがここまで声を荒げたのは。荒っぽい言葉遣いで言い捨てた。