致し方ないので、上司お持ち帰りしました




 アパートを引き払ってしまったので、新しい部屋が見つかるまでいさせてもらえるように頼もうか?


 この生活に未練がましい自分に笑ってしまうほどだ。


 暗く静まり返る部屋で、一人でぽつんと考えた。

 どうせ終わってしまうなら、いっそのこと「好き」と伝えてしまおうか。


 でもそれでは同居当初にした約束を破ってしまうことになる。


 約束を破って好きになってしまったのは私だ。ルール違反した私は好きと伝える権利なんてない。

 真白さんが私を好きになることはないとわかっていて、告白をするなんて。完全な自己満足でしかない。

 冷たい部屋を見渡すと、楽しい記憶が簡単によみがえる。


 正直、他人と暮らすなんてストレスでしかないと思っていた。だけど、この部屋で感じたのは、満ちた幸せばかりだった。


「でも、いつかは終わるんだよね、」

 言葉を零しながら、不動産情報の資料をテーブルに並べた。きちんと選別しなければならないのに、どうしても気力がでない。

 
 しばらくボーっとしていると、玄関ドアが開かれた。

「ただいま」


 真白さんだ。もう少し帰りが遅いと踏んで油断していた。急いで不動産情報の資料をテーブルの上から片づけた。
 

 
 
 
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