クリスマスなんて大嫌い! ~黒鼻のトナカイ~
視線を逸らしても、太郎さんの赤いエプロンが自然と視界の中に入ってくる。
その小さな赤い点が次第に大きくなっていき、太郎さんは私達の横を無言で通り過ぎて行った。
こっちは頭下げたんだから、太郎さんだって少しは反応してくれたっていいのに……。
そう思いながら裏口から外に出ていく太郎さんを睨みつけた。
着ぐるみを着た翼君と私は、昨日と同じように店の前で子供たちに飴を配った。
だけど、今日の翼君は昨日とちょっと違う。
子供たちに手をふるだけで、触れ合うことはなかった。
どうしたのかな……?
体調悪い?
いろいろ考えてみたけど、直接話せないトナカイ同士じゃ何も聞けない。
私は翼君の肩をポンポンと叩き、ガッツポーズを見せた。
翼君、あと少しだから頑張ろう! って。
そしたら翼君も同じようにガッツポーズをして見せてくれて
着ぐるみの中なのに、翼君が微笑んでくれているように見えた。
翼君、一緒に頑張ろうね!!