クリスマスなんて大嫌い! ~黒鼻のトナカイ~
ガチャンッ――!!
パイプ椅子が手の中から滑り落ち、床で大きく音を立てた。
私は手に力が入らなかったことと、大きな音に驚き肩をすくめた。
「ごめんなさい」
慌てて椅子を直そうとする私と同時に、太郎さんが軽々と椅子を持ち上げた。
椅子を直してくれた太郎さんの顔を見上げると、太郎さんの黒い瞳は私を見ていた。
な……なに?
視線を逸らさない太郎さんから、私は目を逸らすことが出来ない。
どうすればいいのかわからず首を傾げた瞬間、太郎さんが私の手を握った。
えっ!? 太郎さん――!?
急にドキドキと騒がしくなった胸の音が、耳に聞こえてくるようだった。
太郎さんの大きな手が、私の顔に……。