クリスマスなんて大嫌い! ~黒鼻のトナカイ~
事務室に入ると、太郎さんがさっきと変わらずパソコンに向かっていた。
トナカイの顔を外した私は、翼君と飴を籠に詰めながら太郎さんの背中に目を向けた。
「あと1時間だからこのくらいで足りるかな?」
「そうだね。子供の数も減ってきたし……」
このバイトも、あと一時間。
クリスマスの時間が刻々と過ぎてるんだね。
飴を詰め終えた時、翼君の鞄から携帯の着信音が鳴った。
前に一度だけ聞いた着信音のメロディー。
翼君は携帯を手に取る前に私に言った。
「優ちゃん、すぐに行くから先に戻っててくれる?」
なんだか慌てた声で言った翼君に「うん」って返事して、私は事務室を出た。
だけど、トナカイの姿で事務室を出た私は、ドアノブから手を離せなかった。
だって
だって……