クリスマスなんて大嫌い! ~黒鼻のトナカイ~



事務室に入ると、太郎さんがさっきと変わらずパソコンに向かっていた。



トナカイの顔を外した私は、翼君と飴を籠に詰めながら太郎さんの背中に目を向けた。



「あと1時間だからこのくらいで足りるかな?」

「そうだね。子供の数も減ってきたし……」



このバイトも、あと一時間。

クリスマスの時間が刻々と過ぎてるんだね。





飴を詰め終えた時、翼君の鞄から携帯の着信音が鳴った。


前に一度だけ聞いた着信音のメロディー。




翼君は携帯を手に取る前に私に言った。


「優ちゃん、すぐに行くから先に戻っててくれる?」



なんだか慌てた声で言った翼君に「うん」って返事して、私は事務室を出た。


だけど、トナカイの姿で事務室を出た私は、ドアノブから手を離せなかった。




だって



だって……







< 66 / 98 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop