クリスマスなんて大嫌い! ~黒鼻のトナカイ~
男性は歩きながら顔を左右に動かし、
一つのオモチャを手に持って微笑んだ。
その笑顔がとても優しくて……
苦しかった私の胸がちょっとだけ呼吸した。
私のお父さんもあんなふうにプレゼントを用意してくれてたのかもしれない。
そう思うと、噛みしめていた唇から力が抜けた。
男性が帰って行く後ろ姿を見送っていると翼君が戻ってきて、私は視線を下に落とした。
さっきの翼君の声を思い出すと、翼君を見ることなんてできないよ……。
胸に痛みを抱え込み、残りわずかなバイトの時間をなんとか過ごそうとした。
なんとか
なんとか過ごしたい。
だって、軽い気持ちで引き受けたバイトだけど、
ここは素敵な場所だから。
夢を抱えた子供たちが、目を輝かせてるから。