クセ強執事が嫉妬したら重すぎる溺愛に囲われました。
八重姉様というのは私の従姉妹で満咲本家の一人娘。
他校にも知れ渡る程の美人で、何をやらせても美しく優雅で様になる、私の憧れのお姉様。
幼稚舎から通っていた女子校から共学の東桜高校への入学を許されたのは、本家の八重姉様がいるからというのが大きい。
八重姉様のことが知られてしまうのは仕方ないけど、私がお嬢様だってことはバレたくない。
だってもしバレたら、みんな普通に接してくれないかもしれないから――。
「ねぇねぇ、八重さんってどんな人がタイプなの?」
「今彼氏いるの?」
そう思ったんだけど、さっきから振られるのは八重姉様の話ばかり。
「お嬢様ってどんな生活してるのかなぁ」
「執事とかいたりしてな〜」
そしてちょいちょい刺さるんだよなぁ……。
「あはは、どうなんだろうね〜」
こういう時私にもっと会話スキルがあったら、上手く話せていたのかな。
「――なぁ、さっきからいない人の話はやめろよ」
突然一人の男の子が助け舟を出してくれた。
名前は確か、海棠秋人くん。
「満咲さんに失礼だろ」
「あっそんなつもりなかったけど……ごめんね李奈ちゃん」
「ううん!全然っ」