あの子、溺愛されてるらしい。
「中條さ…。」

「おいで。」



そう言うと中條さんは私の手を握って歩き始める。
手を握られたことにドキドキして私は大人しくついて行った。


連れてこられたのは佐野先輩と話したあの誰も来ない教室だった。中に入るとやっと手が離れた。



「さっき、俺のことかばおうとしたのか?」

「いえ…でもさっきのはデタラメでしたよね。間違いは正さないと!」

「本当にまっすぐな子だ。梨央は。」



そう言って中條さんはそっと私の頭を撫でた。


まただ。彼に触れられるたびに心臓が甘くうずく。なんともないふりをしようとしても自分の頬が赤く染まっていくのがわかった。



「また顔が赤くなった。可愛い。」

「急に触るからです!やめてください…!」



言い返すと頭を撫でていた彼の手が頬に下りてくる。



「ごめん。可愛くて。」

「…!」



何も言い返せない。ドキドキしている胸の音が中條さんにも聞こえそうで早くその場を離れたかった。



「あ、あの…」

「俺のことはかばわないで。」



ふと中條さんが真剣な顔になってそう言った。



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