あの子、溺愛されてるらしい。
「私です。」

「え…?」

「たとえ痛くないと思っても何かあったら言ってください。なんでも。私に。」

「もし言ったら…どうするの?」

「守ってあげます。」



中條さんが目を見開いた。



「守る…?」

「守って、治療してあげます。それから教えてあげます。ここ、けがしてるよって。」



そう言って私は人差し指で中條さんの心臓を指差した。そして目が合った瞬間、そのまま彼に抱きしめられる。



「中條さん…?」

「…好きなんだ。もし誰かに取られたらどうにかなりそうだ…。」

「…え。」

「みんな怖がるばっかりで、俺のこと知ろうともしなかった。でも梨央は…知ろうとして、深くまで踏み込んで来てくれた。そんな人初めてだ。」



私を抱きしめる腕にぎゅっと力が込められる。私は驚いて固まったまま何も言えずにいた。



「梨央は心配してくれたけど…今回の噂のおかげで梨央に近付く男がいなくなってちょっと嬉しかった。」

「…そ、そんなこと思ってたんですか。」

「…ごめん。」



体は離した中條さんがパッと両手をあげてニコッと笑う。



「それからまた急に触ってごめん。さっき言われたのに。」

「…!」


< 26 / 47 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop