あの子、溺愛されてるらしい。
期待するような目でじっと見つめられて私は勇気を出すことにした。



「栄斗…。」

「…呼び捨て?」

「…え。違うんですか。」

「栄斗先輩って呼ばれるかと思ってた。」



その瞬間自分が勘違いしていたことがわかって顔が真っ赤になった。



「ごめんなさい!栄斗先輩!」

「あ…!呼び捨てが…いい。すごく嬉しかったから。」

「…本当ですか?本当に呼びますよ?」



嬉しそうに頷く先輩の…いや、栄斗の顔を見て私はほっと安心した。恥ずかしいけれどドキドキした。


それから少しした場所で別の方向に帰る栄斗とは別れた。



『明日も一緒に帰ろう。その次の日も。…これから梨央が都合がいい日はいつも一緒に帰ろう。』



帰り際に栄斗に言われた言葉を思い出してまた胸がドキドキした。彼に会うたびこんな気持ちになる。


こんなに出会ってすぐに彼が気になるなんて早すぎる。告白されたから気になってしまうだけだろう。


そうは思うのに自分の心臓が言う事を聞かない。彼が近付いてきてくれる度、自分も彼に近付きたくなるのだ。


…好きなのかもしれない。栄斗が。


でも誰かを好きなのかもしれないと思ったことも初めてで自分の気持ちが確かなのかもわからなかった。


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