あの子、溺愛されてるらしい。
俺はすぐに思い出した。いつも梨央が一緒にいる女子だと。


そして少し横に視線をずらすとそこには梨央が立っていた。



「あ!梨央ちゃん!!」



慎太郎が親しげに名前を呼んだのに動揺して思わず知らないふりをした。



「こいつが文月梨央?」



なんて嫌な言い方だ。こんな言い方じゃ怖がらせるだけだ。


でも梨央は怖がらずに俺に話しかけてきた。



「私が文月梨央なんですけど…。どうしてこうなったかご存知ですか…?」



噂は自分せいだということと、原因を知らないふりをした罪悪感から思わず梨央に謝った。



「中條さんは大丈夫ですか?知らない人と急に噂になって困ってますよね。」

「噂はきっといつか収まりますよね。それまでは頑張らないと。」



笑顔で優しい言葉ばかりを俺にかける梨央に驚いた。今までこんな人はいなかった。外見だけでなくて中身も綺麗な子なのだとこの時知った。



それから俺は欲が出た。会うたびに梨央に近付きたくなって、自分の気持ちを打ち明けたいとも思うようになってしまった。


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