あの子、溺愛されてるらしい。
でも自分の気持ちを言う前に、噂の原因をきちんと言わなければいけない。これで梨央に嫌われてしまうかもしれない。


そう思いながらあの日、梨央に噂の原因と自分の気持ちを打ち明けた。



「…中條さんは悪くないです。」

「中條さんの方が優しいです。だから私も今、あなたは悪くないってすぐに言えたのかもしれません。」



赤い顔をしてそう言う梨央に愛おしさが溢れて、この子を諦められないと思った。


この日から俺は自分でも止められないほどどんどん梨央を好きになっていった。


そしてある時、放課後に梨央の教室に行くとドアの前に立っている彼女が見えた。近付くと俺についての噂が聞こえてきた。


梨央がドアに手をかけたのを見て俺は急いで腕を掴んだ。彼女が傷付くのが怖くて。


でも梨央は俺のことばかりを心配していた。



「このままじゃ中條さんが悪く言われます。噂ってすごく怖いんです。明日にはさっき言われたことが学校中に広まってるかもしれませんよ。」



俺は自分が何か言われるよりも梨央が何か言われることが嫌だった。自分は慣れているし、どうでもよかった。それは本心だった。



「守ってあげます。」



そう梨央は言った。学校のボスといわれている俺を。小さな体で、"守る"と。



「守って、治療してあげます。それから教えてあげます。ここ、けがしてるよって。」


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