あの子、溺愛されてるらしい。
授業が終わって放課後。 


栄斗が迎えに来てくれる前に急いで乃々佳が貸してくれたリップを塗った。顔が明るく見える気がして嬉しくなった。



「また明日ね。梨央。」

「バイバイ乃々佳。これありがとう。」

「はーい。」



手を振りながら乃々佳は帰っていった。それから少しして栄斗がやって来た。



「梨央おまたせ。行こう。」

「うん!」



かばんを持って近付くと栄斗が少し驚いた顔をした後微笑んだ。



「可愛い。リップ塗ったの?」

「あ!気付いてくれたの?」

「見たらわかるよ。すごく可愛い。」



栄斗が私の頬に手を当てて親指で下唇に触れた。唇に触れられるのなんて初めてでびっくりした。



「お、落ちちゃいます。触ったら。」



ドキドキして見当違いなことを言う私にふっと笑って栄斗が頬から手を離した。



「本当に可愛い。キスしたい。」

「え…!?」



その時、今自分が教室の前にいることを思い出した。周りにいた人たちが気まずそうに私たちを見ていた。



「中條先輩って彼女の前だとあんな感じなんだ…。」

「全然怖い人じゃないね。」



そんな声が聞こえてくる。 


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