あの子、溺愛されてるらしい。
栄斗に関しての誤解が解けるのは嬉しいことだけれど、そのせいで彼にモテ期が来ていると少し前に佐野先輩が言っていた。


だからちょっと複雑な気持ちだ。



「も、もう行きましょう栄斗!」



私は急いでその場から栄斗を連れ出した。


彼の手を引いて校門を出たところで今度は栄斗が私の引いた。



「お?どこ行くんですか?」

「ちょっとだけ。」


そう言って栄斗が私を連れて行ったのは、前に来た小さな公園だった。前のように私をベンチに座らせた栄斗はすぐ隣に腰をおろした。



「どうしました?」

「…さっきの続きしてもいい?」

「え…。」

「キスしたい。」



ドクンと心臓が鳴った。今まで恋人らしいことといえば手を繋ぐくらいしかしていなかった。


だからすごく緊張する。…でも。


頷くのも恥ずかしくて私はそっと目を閉じた。


少しずつ栄斗の顔が近付いてくるのを感じて緊張から無意識に手をぎゅっと握った。


そのままそっと唇が重なった。


すぐに離れたけれど、ドキドキが収まらなかった。



「今日のところはこれくらいで。」

「え。今日のところは?」



今のでいっぱいいっぱいなのにこれ以上どうしたらいいのか…。



「好きだよ梨央。」

「私も好きです。」



思いも寄らない噂から始まった恋だけれど、こんなに甘い毎日が待っているなんてあの時は思わなかった。


私たちは手を繋いでデートにくり出した。








          END



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