あの子、溺愛されてるらしい。
でも彼は意外にも何も言わず黙っていた。怒っている様子もなくて私は少し安心した。



「梨央ちゃん!俺は3年の佐野慎太郎(さのしんたろう)っていうんだ!覚えてね!」

「え…?」



茶髪の人は自己紹介をしてニコニコ笑っている。この人、3年生だったんだ…。すごく童顔でそうは見えなかった。



「あんた3年生なの!?」



乃々佳が驚いて思わず聞き返している。



「乃々佳ちゃん。3年ってわかったのにその口のきき方は…。」

「何で私の名前知ってるの!」

「いや、さっき梨央ちゃんが言ってたから…。」

「梨央の名前はどうして知ってるの!」

「いや、それは…。」



乃々佳と佐野先輩がすごい速さで会話を始めた。テンポが速すぎて間に入ることもできない。



「おい慎太郎。もうやめろ。」



黒髪の人が一言止めると佐野先輩はすぐに口を閉じた。そして今度は私に視線を向けてくる。



「梨央ちゃんこいつのこと知らない?」



そう言って隣の彼を指差す。


首を振ると佐野先輩は無言でうんうんと頷いた。


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