完全無欠な財閥御曹司の秘密は、私だけに××!

 ーーでもやるしかない。

 少し前に見たドラマを思い出し、これだ、と思って勢いよく部長を抱きしめ返す。背中をつかみ、息を吸って口を開く。

「私、今夜は帰りたくありません!」

 たぶんこんな感じだったはず。

 面食らった顔をした部長と目が合った。

 え、間違った?
 私は部長に目で聞く。部長は困った顔で笑ってる。

 相手に聞こえるように大声で演じてしまったのが敗因か。それとも内容?
 理由がわからない私でも、この作戦の協力者に向かないことだけは分かってる。

「ごめんなさい。やっぱり私じゃ役に立ちません。私以外の他の作戦考えてください」

 小さく言うなり、部長がニコッと笑った。

「君を逃すわけないだろ」
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