完全無欠な財閥御曹司の秘密は、私だけに××!
 部長はふわりと私の頬を撫でる。
 そしてそっと耳元に唇を寄せた。熱い吐息が耳にかかる。

「もちろん帰さないよ」
「ひゃっ……」

 ゾクゾクッと背中に電気が流れたようになった。
 慌てて見上げると視線を絡めとられる。

「ぶちょ」
「大河だ」
「……た、大河さん」

 有無を言わさぬ迫力。思わずその名を呼んでいた。
 顔が近づいてくる。ゆっくり、確実に。

 嘘、恋人のふりってキスまでするの⁉
 視界がぐわんとゆがむ。だって、私、まだキスしたことないんだから。

 どうしよう、と何度も繰り返しても、唇の距離は縮まり続ける。
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