完全無欠な財閥御曹司の秘密は、私だけに××!
 私は昔から怒ると後先考えなくなってしまうところがある。

 あんなことで軽々800万なんて大金を払うことにも。私と兄にとって何より大事な病院の運命を左右するようなお金を気軽に出せちゃうことにも腹が立った。

 部長はキョトンとしたあと、「ハハッ」と心底楽しそうに笑う。
 何がおかしいのよ⁉︎

 私はムッとして、口を開く。

「とにかく返しますから!」
「別にいいよ」
「返します!」

 部長は少し考え、それから口を開いた。

「じゃあ分割でゆっくり返して。お礼に利息はいらない、ってどう? これなら問題ないだろ」
「……部長がそれでいいなら」

 それはたった数分の恋人のフリだけで800万くれるという提案に比べたらかなり常識的。
 私にとってはとてもありがたい話だけど。

 言うなり、部長は口角を上げて微笑む。

「あぁ……これからのことを考えても、それが一番いいな」
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