完全無欠な財閥御曹司の秘密は、私だけに××!
おかしなスピード感で物事が決まり、屋敷を出てもぬけの殻になってる私に部長は口を開いた。
「どうしても普通に同棲が嫌だと言うなら、明日から俺とアルバイト契約するというのはどうだ? 恋人のフリの副業だ」
会社は本業に差し支えない限り、副業可。確かにバイトであればできるけど。
恋人のフリの副業って何?
疑問に答えるように、部長は言う。
「とりあえず一緒に住むだけでいい。もちろん手は出さない。部屋は別々。でも父の前では恋人のフリをして。家賃光熱費生活にかかる費用はすべて無料。バイト代はそのまま医療機器の返済に充てればいい」
「いいお話ですが、でも……一緒に住むなんて……」
「じゃ、今から『さっきのは全部嘘でした』と父に謝ってくる? 父はそういった嘘は嫌いだ。首になるんじゃないかな」
「うっ……」
私がグラグラ揺れ悩んでるとき、私のスマホが鳴った。兄からだった。
『芽衣、今どこにいるの? あのね、自宅の水道管の老朽化で水漏れが起きてたんだって。復旧まで水が使えないから、当分どこかに泊まって欲しいんだけど』
私に選択肢はなかった。