完全無欠な財閥御曹司の秘密は、私だけに××!
大河さんは私の話を聞き終わるなり、口を開いた。
「それくらいで居心地悪いだなんて、結婚してから困るぞ」
「結婚しないんだから、結婚してからの心配はしなくてもいいんです! ……って何してるんですか」
「料理だ」
見ると手慣れた手つきで、料理をしている大河さん。
ニンニクを包丁の腹でつぶしていると思えば、素早く他の野菜も切り分け、アヒージョ、パスタ、サラダも並行して作ってる。
どう見ても私よりうまい……。
「料理、できるんですね」
「料理は好きな方なんだ」
ほう、と感心しながらつい見てしまう。
「外食するにしてもどうしても女性と遭遇するからどんどん回数が減ってな」
料理が得意なのは、彼なりの事情も絡んでるようだ。
手伝えることはありますか、と聞いたら、レタスをちぎるという、一番簡単で失敗のなさそうなことを任された。
手を洗い、大河さんの隣でレタスをちぎっていく。そしてふと今日安西さんが言ってたことを思い出した。
「……昔、大河さんは、女性が苦手ではなかったんですか?」
「安西に聞いたのか」
「はい」
「そうだ。中学に入るころまで、な」
――どうしてダメになったんですか?
聞きたい気もするけど、聞かれたくないだろうと思った。自分も同じころ、嫌なことがあって聞かれたくないし言いたくもない。