完全無欠な財閥御曹司の秘密は、私だけに××!

 そんなある日、「土曜、外食しないか?」と誘われた。外で食事なんて、副業の恋人のフリだろうと頷いた。

 そして土曜の夜、私がいたのは――。

「わぁ、すっごい綺麗……」

 夜のスカイツリーや、少し行けば羽田空港が見える船の上。いわゆるディナークルーズというものだ。
 だけど、想定と少し違ったのは……。

「綺麗なんですけど、いくら何でもディナークルーズ貸し切りってやりすぎですよ。無駄遣いしすぎです」

 個室はあると聞いたこともあったけど、まさかこんな200名以上乗れそうなディナークルーズを貸切ってしまうとは思ってなかった。
 大河さんはシレリと言う。

「無駄遣いとは思ってない。デートなんだから」
「デートなら普通に他の人がいるディナークルーズで十分ですよっ。せめて個室でっ」

 と言ってから、慌てて「って、これデートじゃありませんけどね。デートのふりですから!」と付け加えた。

 ふっと笑って大河さんは手を差し出す。

「もう船も出航してる。せっかくなんだ、諦めて楽しもう」
「諦めてって。……でも、その通りですね」

 思わず頷き、その手を握った。
 恋人のフリは副業。これもちゃんとやってやりましょう。

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