完全無欠な財閥御曹司の秘密は、私だけに××!
広い船上で二人きりは寂しいかと思ったけど、ピアノ演奏、バイオリン三重奏まであって、案外満喫してしまった。なにより、ワインも料理もおいしい。
「どれもこれもすごくおいしいです!」
「食材は串本フーズのものが多いんだ。それにここのシェフは祖父が引き抜いてきて、それからずっとここのレストランで料理長をしてる。祖父の舌は確かだからな」
「大河さんの料理の味のセンスはおじいさま譲りってことなんですね。どれもおいしいですし」
「……そうかもしれないな」
大河さんはふわりと笑った。
私はその笑顔を見て、以前少し気になっていたことが晴れた気がした。
「よかったです。親族でも気を許せないような雰囲気だと思っていたので。そういう顔ができる親族もいらっしゃるんですね」
以前、秘密を頑なに隠す理由が親戚に付け込まれるからだと言っていた。
きっと私にはわからない何かがあるんだろうと簡単に推察された。
そんな中でも、一人でも彼の味方になるような人がいればいいなと思っていたので、正直、ホッとしたのだ。
きっとおじい様には心をゆるしているんだろう。話し方からもそんな気がした。