完全無欠な財閥御曹司の秘密は、私だけに××!
ホテルの前までタクシーを呼ぶ。
タクシーは待っていたようですぐに二台きた。部長が私に言った。
「遅くなってすまない。先に高峰さん乗って」
「ありがとうございます」
「大河くんはまだ私に付き合ってよぅー」
安西さんは酔っ払っているようで、部長の腕に絡む。
いつもきれいで完璧な安西さんのかわいらしい姿に私は頬が緩む。
「いや、今日はもう……」
「いいじゃないー」
しかし、部長は困ったように安西さんの腕を離していた。安西さんはあきらめずに再度手を取る。
なんだか部長らしくない仕草にじっと顔をよく見る。
暗くてよくわからなかったけど、顔が青くなっていることに気づいてしまった。
そういえば、今日は上海出張から直接帰ってここに来たんだ。
全然眠れていないのかな。
あまりにも青い顔の部長に、どうしても我慢できなくて声をかけてしまった。
「ぶ、部長! 確か、うちと同じ方向ですよね。途中まで一緒に乗っていきませんか?」
「いいのか?」
部長がすかさずこちらを向く。
部長の自宅の方向なんて知らないし、自分で出まかせを言ったくせに、それにすぐ乗ってきた部長に驚いてしまった。
「も、もちろん」
部長の足元がふらりとしたのが見えて、たまらず部長をタクシーに押し込んだ。
「部長は私がきちんと送り届けます。今日はありがとうございました!」