キミと過ごした、光輝く270日間のキセキ【2.19おまけ追加・完結】
別に、こき使われているなんて思っていない。

これが私たちの仕事だし、ほかの科の医師事務も同じことをしている。
ただ、匠真のはほかのドクターより量が多いけど。

だからこそ、ほかの業務に集中できるように、私が雑務をこなさないと。


「大丈夫ですよ。私のような事務でも、頼っていただけて光栄です」

「さすが矢田さん。また俺の書類もよろしく」

「はい。私でよければなんなりと」


「助かるよ」と言って、手を振りながら外来から出て行った大貫先生。
今から、匠真と一緒に鼠経ヘルニアのオペらしい。

鼠経ヘルニアは別の病院でもいいくらいのオペだけれど、匠真の噂を聞きつけ、どうしても大音病院での手術希望があったらしい。

患者さんは、いったいどこから情報を入手するんだろう。

そんなことを考えながら「ふぅ」と小さなため息を漏らして、先ほど匠真から受け取った書類に目を落とした。


「あ……この人」


『診断書』と書かれた1枚の書類。
申込者の名前を見て、胸がぎゅっと押しつぶされそうになる。

42歳女性の、中條真奈美(なかじょうまなみ)さん。


今から半年前、右胸の辺りに小さなしこりを自覚して、当科を受診した。

様々な検査を行った結果、乳がんの診断。
まずは、抗がん剤治療を行って、治療は順調だった。
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