キミと過ごした、光輝く270日間のキセキ【2.19おまけ追加・完結】
「了解」と言いながらスムーズに受付を済ませてくれ、受診票を渡してくれた。

香川さんは、産休に入った森脇さんの代わりに外科外来に来てくれた看護師さん。

42歳の彼女もまた、森脇さん同様ベテラン。
出産前は外科病棟に勤務していたらしく、外科のことに関しては詳しい。

外科に異動になる前はウロ科――泌尿器科外来で勤務していて、どうやら外科系に縁があるようだ。


「左の股関節に痛みがあるのよね?」

「はい。つい1週間ほど前からです。でも、痛みも日によって違います」


「なるほど」と呟きながら、私の主訴を電子カルテの看護記録に残していく香川さん。
事情を説明し、主治医である匠真もレントゲン検査をオーダーしてくれた。

外来の合間にレントゲン撮影を済ませ、患者さんがいなくなってから診察室へと入った。


「葵、もう少し早くに検査できなかったのか?」

「そんなに気にならなかったんです。生活に支障もなかったし……」


俯いて口籠る私に、匠真の視線が突き刺さる。
でも、生活に支障がなかったのは事実だ。

安心材料として検査をしてもよかった。
けれど私だって4年近く外科に携わっていて、外科系の病気について知識がないわけではない。

嫌だったの。
ただ単純に、病気の再発を告げられることが……怖かった。
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