キミと過ごした、光輝く270日間のキセキ【2.19おまけ追加・完結】
そんな私を見て、診察に立ち会ってくれていた香川さんに席を外すよう指示した匠真。

香川さんが外来からいなくなると、優しく私を抱きしめてくれた。
大好きな人のぬくもりに、次から次へと涙が溢れる。


「葵は1人じゃない。今回も、一緒に乗り越えよう」

「……はいっ」


匠真の腕にくるまれながら、何度も首を縦に振る。

大丈夫だ。私には、匠真がいてくれる。
1番の理解者だということをすっかり忘れて、逃げていた。

でも、匠真となら乗り越えられる。
乗り越えてみせる。


「今回は、ちょっと長丁場になるかもしれない」

「うん、大丈夫。匠真がいてくれるから……」


『腰椎に転移』とわかった時点で、少し予想はしていた。

前回とは違って、癌の再発箇所は2ヶ所。
長くなって当然だろう。


「よし。俺も一緒に頑張るから」


匠真に抱きしめられたまま、小さく頷く。

そんな私のおでこに、匠真は優しくキスを落とした――。



それからすぐに、入院の手続きが行われた。
両親も病院に駆けつけてくれて、匠真から病状説明をしてくれる。

母はこの結果に泣き崩れていたけれど、すぐに検査をしなかった私のことを責めたりはしなかった。

そんな母を見て『もっと早く検査しておけばよかった』と思ったけれど、もう遅い。
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