キミと過ごした、光輝く270日間のキセキ【2.19おまけ追加・完結】
そんなことを考えているうちに大粒の涙が溢れ出し、頬を伝う。

それを隠すかのように、ベッドに潜り込んだ。


* * *

「わぁ、かわいい」


秋も深まった10月中旬のある日。

外の大きな桜の木を眺めていると、私の病室に「面会希望で」と駆けつけてくれた人がいた。


「抱っこしてみる?」

「えっ!? いいんですか?」

「全然いいよ。はい、どうぞ」


ベッドで上半身を起こした状態のまま、森脇さんから赤ちゃんを受け取った。

授乳を終えたばかりの赤ちゃんは、私の腕の中ですやすやと眠っている。


「新生児って、こんなに小さいんですね」

「そうよ。驚いた?」


「はい」と、小さく返事をして、赤ちゃんの顔を見てみる。

旦那さんの顔を知らないからなのか、森脇さんに似ている気がする。
でも、男の子はお母さんによく似るというから、そのせい?

どちらにせよ、小さくてかわいいことに変わりはない。


「いいなぁ。赤ちゃん」

「ふふっ。矢田ちゃんも、五十嵐先生との未来があるじゃない」

「そうだといいんですけどね……」


そう言いながら、森脇さんに赤ちゃんを受け渡す。

口では前向きな発言をしたが、心の中はよくわからない感情が渦巻いていた。
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