キミと過ごした、光輝く270日間のキセキ【2.19おまけ追加・完結】
なぜなら、ここのところ状態があまりよくない。


10月に入り、前回の抗がん剤『タキソール』から『ハラヴェン』という抗がん剤に変更となった。

タキソールよりも強い抗がん剤だそうで、副作用が強く出る。
身体中のありとあらゆる毛が抜け落ち、体力も減った。

吐き気もあり、食事が思うように摂取できない。

病室内のトイレくらいまでなら歩行可能だが、1階にあるリハビリ室まで行こうと思うと車いすで移動しなければならない。

体重も、あっという間に4kgほど落ちた。
メイクはできず、鏡に映る表情にも覇気がない。

こんな状態が続いていて、なかなか前向きな気持ちが湧いてこないのだ。


「結婚式、挙げたかったな……」

「なに弱気になってるの。今からじゃない」


私に代わって、前向きな言葉をくれる森脇さん。

心配かけたくなくて「そうですね」と、わざと明るく笑ってみせた。
前は、こんな作り笑いは得意じゃなかったのに。

いつの頃からか、作り笑いを覚えてしまっていた。


「矢田ちゃん、ウェディングドレス似合いそう」

「そうですか? でも、少し痩せたし……」

「なに言ってるの! 女の子はね、太るのは得意よ」


笑いながらそう言った森脇さんの言葉には、なぜか説得力があるような気がする。
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