キミと過ごした、光輝く270日間のキセキ【2.19おまけ追加・完結】
真剣な面持ちでそう言った森脇の言葉に、ドクンと心臓が大きく波打つ。

葵のことで、なにか話があるということか。


「五十嵐先生、単刀直入に言います。矢田ちゃんって、もう……」

「……あぁ。森脇も理解したのか」

「私だって、伊達に看護師してるわけじゃないので」


「本当、失礼ね」と言いながらも、森脇は涙ぐんでいる。

……そうか。森脇も、葵に会って理解したのか。
葵の、この先のこと。

おそらく彼女は、1月の誕生日までもたない。
葵自身は寿命を聞きたがらないが、なんとなくわかっているような気もする。

ここ最近になって、マイナス発言が増えたのだ。訪室した際、泣いている姿も何度か目にした。

俺たちの前では強がってなにも言わないけれど、きっと理解してる。


「陽子線治療も考えたが、多分彼女の体力がもう限界に近いだろう」

「………っ」


俺の発言に、森脇はぽろぽろと大粒の涙をこぼす。

できることなら、次の治療に進む予定だった。
しかし、抗がん剤治療の副作用で食事が満足にできず衰弱している葵には、少し負担が大きすぎる。

俺だって、葵が生きていられるなら次に進みたい。

でも、医療技術にも限界があることも確かなのだ。
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