キミと過ごした、光輝く270日間のキセキ【2.19おまけ追加・完結】
俺の隣では、ご機嫌で鼻歌を歌っている葵。

もうすぐ。もうすぐ、目的地である結婚式場が見える。


「葵。もうすぐ着くんだけど……」

「え? この辺り?」

「あぁ。ほら、ここ」


そう言いながら、結婚式場の前に車を停止させた。

葵はというと、窓から外を見たまま動かなくなっている。


「え、待って。ここって……」

「結婚式場。今日は、葵の夢がすべて叶う」


そんな話をしていると、式場の中からパーティードレスに着替えた森脇が出て来た。


「え!? なんで? 森脇さん……?」


驚きを隠せない様子の葵をよそに、森脇が助手席のドアを開ける。


「待ってたよー!! いやぁ、晴れてよかった!」

「え……ちょ、なに、これ……」

「なにって、今から結婚式よ? 2人の」

「えぇっ!?」


大きな声を上げて驚く葵を嬉しそうに見ている森脇は、後部座席から車椅子を降ろす。
助手席側に回って俺も彼女を手伝い、葵を車椅子に座らせた。

ずっと驚いたままの葵が、なんだかかわいらしい。


「じゃあ、あとは任せた」

「はいはい。五十嵐先生、例の物、忘れないでくださいよ」


つい30分程前にも、同じことを聞いたような。

でも、森脇が何度も念を押すのにも理由があるのだ。
それくらい、重要な物だからな。
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