キミと過ごした、光輝く270日間のキセキ【2.19おまけ追加・完結】
泣きそうになるのをグッと堪え、俺はタキシードのポケットから〝例の物〟を2つ取り出した。

1つは婚姻届け、もう1つは結婚指輪だ。


「え……匠真、これは……?」

「これは形だけの結婚式じゃない。俺の妻になって欲しい。だから結婚しよう、葵」


順番が逆になってしまったけれど、俺たちにはもう時間がなかった。

でも、そんなことは関係ない。
俺はただ、葵が妻になってくれればそれでよかった。

それ以上のことは、もう望まないんだ。

そんな想いを込めて、婚姻届と指輪を葵に渡した。
大粒の涙をぽろぽろとこぼしながら、葵は婚姻届と指輪の入った小さな箱を抱きしめる。


「……ダメ…」


泣いて俯いている葵から微かに聞こえた言葉――。

もしかして、受け入れてもらえなかったのか?


「葵?」

「そんなの……ダメ。結婚なんてしたら……っ、未来の……匠真の奥さんに申し訳ない、から……」


そう言いながら、葵は婚姻届と結婚指輪を突き返してきた。

まさかの展開に、座っていた森脇が葵のそばへ駆け寄る。


「もう……いいの。着たかったウエディングドレスを着れて、形だけでも結婚式ができて。もういいの」


なぜなのか、葵の声が小さく聞こえた。

……違う。違うんだ、葵。
俺はそんな中途半端な気持で、プロポーズをしたわけじゃない。
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