キミと過ごした、光輝く270日間のキセキ【2.19おまけ追加・完結】
それから線香を立てて、両手を合わせた。
ほんのわずかな時間だが、目を瞑り、瞼の裏に浮かんでくるのは葵と過ごした時間のことばかりだ。

旅行へ行って、ネックレスをプレゼントしたときの嬉しそうな彼女の笑顔。

結婚式を挙げた日の、幸せそうな笑顔。

葵の笑顔は5年の月日が流れても忘れることはなく、こうして思い出すと涙が溢れそうになる。


「ねぇねぇママ。はく、おなかへった」


俺の横で羽玖がそう言ったので、ふと現実に戻ってきた。
もう、そんな時間か。

「はいはい。もう少し待ってね」と、森脇は羽玖に言い聞かせている。


「お腹減ったわよね。食事、していくでしょう?」

「いえ。今日は俺1人じゃないので。また後日改めてお伺いします」

「あらそうなの? それは残念ね」


お義母さんは残念そうだったが、今日は俺1人ではない。

羽玖もいれば森脇も落ち着いて食事ができないだろうから、今日は帰りに食事をする予定だ。


「羽玖くん、またおいでね」

「うん! またママとくるよ!!」


荷物をまとめて玄関へ向かう途中、お義父さんも「わざわざありがとう」とお見送りに来てくれた。

2人に見送られながら車に乗り、エンジンをかけてゆっくり車を発進させる。
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