キミと過ごした、光輝く270日間のキセキ【2.19おまけ追加・完結】
浦邉先生や大貫先生、大貫先生の奥さんにも、手紙を書いていた。

葵がいなくなって間もなくしてから、大貫さんが俺のところへ届けてくれたんだっけ。


「実は、まだ読んでいない」

「えぇっ!?」


俺の返事に驚いた森脇は、ハッとして口を手で押さえた。

いや。その反応は、間違っていないと思う。
俺は5年前の手紙を開封したのだけれど、まだ読んでいないのだ。

忘れていたわけではない。
なんとなく、『タイミング』じゃないような気がして。


「医局の引き出しにしまってある」

「嘘でしょ……。5年も?」

「あぁ。別に、忘れていたわけじゃないからな?」


念のため、忘れていないことを森脇に伝えた。

森脇は疑いの目をこちらに向けながら、「もう、信じられない……」とため息交じりに呟いている。


「もうそろそろ、読んでもいいんじゃないですか?」

「あぁ……またタイミングを見て読むつもりだ」

「嘘っぽい……」


そう言いながら、森脇は食後のコーヒーを口にする。

食事が終って森脇と羽玖を送り届けたときも、「手紙、早く読んでくださいね」と念押しされた。


* * *

「五十嵐先生、お疲れ様でした」

「あぁ。お疲れ」


森脇たちを見送ったあと、俺は病院へ戻った。
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