キミと過ごした、光輝く270日間のキセキ【2.19おまけ追加・完結】
電子カルテで入院患者の下肢エコー検査を確認していると、日勤帯の看護師の退勤時間を迎えた。

カルテから目を逸らさずに「お疲れ」と声を掛けていく。

ナースステーションを出た看護師が「相変わらず冷たいよね」と小声で話しているのが聞こえたが、気にしている場合ではない。

明日、オペ予定の入院患者に血栓が見つかり、オペが延期になるかどうかの確認のためだ。
幸い、内服調整によりオペは問題なく行えそうで、ホッと胸を撫でおろす。


「オペ、延期にならずでよかったですね」


そう言いながら、俺にコーヒーを差し入れしてくれる大貫さん。


「あぁ。この患者は早期での手術が望ましかったからな」

「あまり無理なさらずに。奥さんに怒られますよ」


そう言いながら、今日は日勤であった大貫さんもナースステーションを出て行った。
準夜帯の看護師は日勤帯の看護師から申し送りを受け、それぞれ病室に出向いている。

新人ナースの向野(むかいの)さんはナースステーションでの雑務を任されたようで、奥の薬剤室で点滴を探していた。

静かになったナースステーションでコーヒーを一口飲むと、森脇の言葉が頭を過る。


『手紙、早く読んでくださいね』


「そうだな……」


俺は席を立つと、コーヒー片手に医局へと向かった。

デスクの引き出しを開け、葵からの手紙を取り出す。
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