キミと過ごした、光輝く270日間のキセキ【2.19おまけ追加・完結】
家族全員が揃ったところで、大貫さんが準備してくれた椅子に腰かけた。


「では、早速ですが。矢田葵さんの、病状についてーー」


電子カルテを操作しながら今日撮影した造影MRIの画像を開く五十嵐先生。
受診契機から診断結果まで、素人にでもわかるように丁寧に説明をしてくれている。

そして今後の治療方針について。

まずは2週間、入院して集中的に化学療法をする。
抗がん剤の効果があれば、通院による化学療法へと切り替えるそうだ。

あまり医療に詳しくない両親も、首を縦に振りながら五十嵐先生の話を聞いていてくれた。


「ーーここまでで、なにか質問はありますか?」


五十嵐先生はすべてを説明し終わると、画像を消して私たちに質問してくれる。

私は、普段外科外来で勤務をしているため、今のところわからないところはなかった。
五十嵐先生の説明が、わかりやすかったこともあるかもだけど。


「あ、あの……。副作用は?」


沈黙の中、質問を投げかけたのは母。

……副作用。
そうだ。そういえば、抗がん剤治療には必ずと言っていいほど、この副作用が出る。

そんなことも、考えなくちゃいけないんだ。


「もちろんあります。具体的には脱毛や吐き気、食欲不振などです」


それを聞いた母は、両手で顔を覆って俯いてしまった。
母もなんとなくわかっていたけれど、ショックだったに違いない。
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