キミと過ごした、光輝く270日間のキセキ【2.19おまけ追加・完結】
私もすぐ目の前にあった階段を降りて外科外来へと向かう。
患者さんの前ではまったく別人だった五十嵐先生に、ちょっと戸惑っている自分がいる。


実は今日、初めて五十嵐先生の診察介助についた。
ほかのドクターたちが言っていたように、確かにすごいドクターなのだとは思う。

今までに聞いたこともないような病名の患者さんを、勤務していた病院から大音総合病院に引き抜いてきたり、事あるごとにオペを勧めたり、向上心のあるドクターだということはすぐにわかった。

ただ、不愛想なのだ。

さっき書類を病棟へ運んで欲しいと言ったときもそう。
『本当に人にものを頼む態度?』というような頼み方だった。

この職に就いて4年目ともなれば、色々なドクターがいることは承知済みだ。
でも、こんなに不愛想なドクターには初めて出会った。

そうかと思えば、さっきの患者さんへの態度……。いったい、なんなの?


「お、矢田ちゃんお帰り。仏頂面してどうした」

「いえ。なんか、五十嵐先生の診察介助疲れまして……」

「え、今日初めて介助着いたばかりなのに」


電子カルテで明日予約の患者さんの予習をしているのは、ナースの森脇さん。

彼女は外来ナースで38歳。
最近まで苗字が〝大西〟だったけれど、気が付いたときには〝森脇〟になっていた。
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