キミと過ごした、光輝く270日間のキセキ【2.19おまけ追加・完結】
さすがは美花だ。
元気付けるためだとわかっていても、未来を見据えた話は嬉しい。

私にもまだ未来があるって、希望を持てるから。


そんな風に美花と話をしていると〝コンコン〟と入り口のドアを叩く音が聞こえた。

あ、そろそろ面会時間終了かも。


「矢田、入るぞ」


ドアが開くと、入ってきたのは五十嵐先生。
右手には、新しい点滴バッグと血圧計を持っている。

いつもは看護師さんが交代で点滴の交換に来てくれるけれど、今日は五十嵐先生のようだ。


「あ、点滴交換か。じゃぁ私、そろそろ帰ろうかな」

「そっかぁ。また来てよ?」

「もちろん。すぐ来るから大丈夫」


そう言いながら、美花は手を振りながら病室を出て行ってしまった。

面会は嬉しいけれど、別れる時間が1番寂しい。
原則として面会は1日1回だから、美花とは今日は面会はできない。

寂しいなぁ……と思いつつテレビ台のニット帽を被っていると、五十嵐先生が話しかけてくれた。


「点滴、交換してもいいか?」

「はい。お願いします」


使用済みの点滴バッグを取り外すと、手際よく新しい点滴バッグを繋いでくれる。

毎日こんなことの繰り返しで、本当に辛い。
ずっと点滴に繋がれたまま自由も利かずに、自分のやりたいことすらできない。

普段の生活がどれだけありがたいものなのかが、こんな状況になって初めてわかった。
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