キミと過ごした、光輝く270日間のキセキ【2.19おまけ追加・完結】
「お姉ちゃん、急にどうしたの?」

「どうって……。葵の病気のこと聞いて、帰って来たのよ! 本当はもっと早く帰りたかったのに、やっと仕事の休みが取れて」


……あぁ、そうだったのか。
病状説明のときも来ていなかったから、仕事が忙しいのだと思っていた。

姉は大学を卒業して、県外で小学校教師として働いている。

小さい頃からの夢を叶えた姉。
主に土日祝日が休みの小学校だから、帰って来れなくても仕方がないと諦めていたけれど。

わざわざ、帰って来てくれたんだ。


「お姉ちゃん、ありがとう」

「なに言ってるのよ。帰って来るに決まってるでしょう?」

「……嬉しい。病気のことはお母さんから聞いたの?」

「そうよ。あぁ、もう……きれいな髪の毛も失って……」


私の頭を撫でながらそう言った姉の目には、薄っすらと涙が浮かんでいる。

そういえば小さい頃、忙しい母に代わって姉によく髪を結んでもらっていた。
きっと姉も、それを思い出しているのだろう。


「ほらほら。廊下で話してないで、中に入りなさい」

「あ……お姉ちゃん、リビングで話そうか」


リビングから母の声が聞こえてきて、ここが廊下だったことを思い出した。

姉と一緒にリビングへ戻りソファーに腰かけると、母がお茶を出してくれる。
こうして家族そろって過ごす時間は、一体いつぶりだろうか。
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