キミと過ごした、光輝く270日間のキセキ【2.19おまけ追加・完結】
入院中に受けた、告白の返事。
今日までずっと、保留にしてきた。そして、とても悩んだ。

もし私に命の期限があるならば、五十嵐先生に迷惑がかかってしまうだけだ。

それでも、私は後悔のない人生を送りたい。
この先長く生きることができたとしても、これで最後の恋にしたいからーー。


「葵、体調はいいのか?」

「えっ、はい。今日は、大丈夫みたいです」

「そう? さっきから黙ったままだし」

「それは……」


とっても緊張しているからです。なんて、言えない。

どうしようかと悩んでいると、ドアをノックする音が聞こえた。
母が、紅茶と焼き菓子を持ってきたようだ。


「葵、入るわよ?」

「うん、大丈夫」


母は静かにドアを開けて中に入ると、あたたかい紅茶と焼き菓子をテーブルに置いてくれた。

昨日は、わざわざこの焼き菓子を買いに行っていたのか。


「すみません。気を遣わせてしまって……」

「いいえ! 大丈夫ですよ。こちらこそ、葵のこと……よろしくお願いしますね」


そう言った母は軽く会釈をして、用事が済むとすぐに部屋を出て行った。

再び訪れる沈黙の間。
なんとかして気持ちを伝えなければと思っていると、先に口を開いたのは五十嵐先生だった。


「部屋の中なのに、ニット帽脱がないのか?」

「え、だって……」
< 70 / 189 >

この作品をシェア

pagetop