キミと過ごした、光輝く270日間のキセキ【2.19おまけ追加・完結】
でも、いつかは「匠真さん」と呼んでみたい。
いつになるか、わからないけれど。


「あー、矢田さんだ。待ってたよ」

「石橋さん。遅くなってごめんなさい。今日もよろしく願いします」

「うん。どうぞ」


石橋さんに案内されて、空いているベットに横になった。

石橋さんは化学療法室専属ナース。
毎回慣れた手付きでスムーズにルート確保を行い、針を刺すときの痛みも少ない。

患者さんからも職員からも信頼されている彼女は、いなくてはならない存在だ。


「体調は大丈夫ね?」

「はい。バイタルも正常でした」

「よーし、点滴取ってくるね」


そう言うと、ベッドから離れて行く石橋さん。

すると今度は五十嵐先生が私のそばへとやって来て、私の頭にそっと触れた。


「終わったら、食事でも行こうか」


耳元で、囁くように言った彼。
急に体温が上昇していくのが、すぐにわかった。

ドキドキしながらも「はい」と返事をすると、嬉しそうに笑顔を見せてくれた五十嵐先生。

彼との食事は、今回が初めて。
退院してすぐの約束も結局果たせておらず、5月は通院しながらずっと自宅で安静にしていた。

それでも会いたい日は、数時間だけ私の家に足を運んで来てくれた五十嵐先生。
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