キミと過ごした、光輝く270日間のキセキ【2.19おまけ追加・完結】
私だけしか知らない、彼の素顔。
あんなに苦手だと思っていた彼の仏頂面が、今は少し嬉しい。

だって、嫌だよ。
ほかの女性にも、あの優しい笑顔を見せるなんて。

五十嵐先生の本当の素顔は、ほかの女性は知らなくていいから。


そんな欲張りな気持を心に秘めたまま、五十嵐先生に返事を打つ。


『それは、またあとにしてくださいね』


送信したけれど、彼はこの後予定している手術に入ってしまったのか、既読マークは付かない。

幸せだな……と思いつつ、スマホをスカートのポケットにしまい瞼を閉じた。


* * *

「矢田さんお疲れ。終わったよ」

「……ん…?」


石橋さんの声で、重い瞼を持ち上げる。

あれ? もしかして私、眠ってしまってた?
軽く目を閉じただけだったのに、寝落ちしてしまうなんて。


「疲れた?」

「い、いえ。そんなことはないと思うんですけど……」


とは言ったものの、まだ仕事に復帰して3週間程度だ。

まだ体力も完全には戻っていないはず。


「無理しないでね。はい、バイタルも正常だったよ」

「ありがとうございます」


ゆっくりとベッドから起き上がり、少し乱れた服装を直した。

ふと、ポケットのスマホの存在を思い出し、取り出して画面を確認してみる。
やはり、メッセージを受信していた。
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