キミと過ごした、光輝く270日間のキセキ【2.19おまけ追加・完結】
でも、メッセージを受信した時刻はつい15分ほど前。
それまで、手術に入っていたに違いない。


『治療お疲れ様。終わった?』


〝お疲れ様〟だなんて。
五十嵐先生の方が、激務で疲れているはずなのに。


『お疲れ様です。私は、今終わったところです』


今度はすぐに既読マークが付いた。
かと思えば、突然スマホが震えだして着信を知らせた。

さずがに化学療法室で電話するのはまずいと思い、スマホを手にしたまま廊下に出る。

着信が切れてしまわないうちにと通話ボタンを押して、慌ててスマホを耳に当てた。


「も、もしもし?」

『葵、今どこだ?』

「まだケモ室ですよ」

『そうだったのか。俺ももう終わる。職員通用口で待っててくれるか?』


会話しながら、スマホの奥ではカタカタとパソコンのキーボードを打つ音が微かに聞こえる。

多分、今日の分の手術記録を電子カルテに打ち込んでいるのだろう。


「わかりました。でも……急がなくていいですからね」

『あぁ、ありがとう。じゃあ、またあとで』


そう言って、切られてしまった通話。

五十嵐先生の仕事は、多分まだ終わらないはず。
だからこそ、「急がなくていい」と伝えておいた。

私のために時間を作ってくれるのは、もちろん嬉しい。
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