キミと過ごした、光輝く270日間のキセキ【2.19おまけ追加・完結】
〝覚悟しておいて〟という、彼の言葉が脳裏を過った。
匠真と一緒にいることを決めたときから、覚悟なんてもうできてる。

だけど、今はまだ。
私自身の体調と、相談しなければいけないから……。


「葵、また明日な」

「はい。今日はありがとうございました」


そう言いながらバッグを手に持って、車から降りた。
ドアを閉めて運転席側を見ると、匠真が手を振ってくれている。

笑顔で手を振り返すと、彼はゆっくりと車を発進させ、住宅街から離れて行く。

私はさっきまでのキスの余韻に浸りながら、彼の車が見えなくなるまで見送った。


* * *

6月最後の土曜日。
梅雨時期だというのにも関わらず、空は晴れている。

姉の強運に驚きつつ、私は控室で姉の支度が整うのを待っていた。


「お姉ちゃん、まだかな?」

「もうすぐよ。ドレスに髪型に、花嫁は支度が大変なのよ」


ドレッサーの前でメイクを直している母も、今日は黒い留袖に身を包み、姉のことを待っている。


今日は、待ちに待った姉の結婚式。

私も、ニット帽をに合わせたピンク色の訪問着を着せてもらった。
別室では父と匠真が支度をしている。

早く、姉のウェディングドレス姿を見たい。

今日までずっと、それを楽しみにしていたんだから。
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