キミと過ごした、光輝く270日間のキセキ【2.19おまけ追加・完結】
座ってしばらくすると、背後からなんとなく視線を感じる。


……あぁ、やっぱり思っていた通りだ。

きっと、結婚式にニット帽を被ったまま参列しているのが不自然なんだろう。


それでも、短い髪をさらけ出すよりよっぽどいい。
髪がないことをコソコソ言われる方が、辛いから。


「葵、もうすぐだな」


突然、そっと握られた私の右手。
すぐ横に座っている匠真が私の心情をわかってくれたよう。

なにも言わず、そっと寄り添ってくれる彼。

今日、一緒に参列してくれて、本当によかった。


「本当だ。急にドキドキしてきました」

「なんで葵が緊張するんだよ」

「え、だって……なんとなく?」


「ふふっ」と笑った匠真は、そっと私の頭を撫でてくれた。
彼の優しさに、さっきまでの嫌な気持が晴れていく。

病気のことをなにも知らない人たちは、憶測で勝手なことばかり言うよね。

でも、誰にでも簡単に言えることでもない。
辛いけど、わかってくれる人はいる。だから大丈夫。

そんなことを考えていると、司会者が話し始めた。


「みな様、お待たせいたしました。新郎新婦の入場です」


司会者と同時にチャペルの扉が開き、先に新郎が入場してくる。

1度しか会ったことがない姉の旦那さんは、以前よりも雰囲気が変わっていた。
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