キミと過ごした、光輝く270日間のキセキ【2.19おまけ追加・完結】
タキシードを着ているせいかもしれないけれど、こんな人だったかな?
それくらい、記憶に薄い。

新郎が聖台の前に到着すると、続いて新婦ーー姉の入場だ。

開け放たれた扉の前で、母と向かい合っている姉。少し屈むと、母が姉のベールをゆっくりと下ろした。

……ベールダウンだ。
花嫁を守ってくれるといわれているベール。

母の手によって下ろされると、父が横に並んだ。
父の腕に手を添えた姉は、ゆっくりゆっくりヴァージンロードを進んで行く。


「お姉さん、綺麗だな」

「……うん、綺麗。私もいつか、結婚式したいです」


叶うか叶わないか、今の時点ではわからない。

でも、それが今の私の夢。


「俺たちもいつかしような、結婚式」


「えっ?」


匠真がなにか言っていたようだけれど、牧師さんの言葉と被ってしまって上手く聞き取れなかった。

真っ直ぐ前を見据えてそれ以上はなにも言ってくれない彼。
聞き直すのは諦めて、私も姉たちを見守ったーー。


* * *

チャペルでの式が一通り終わると、私たちは広い庭で新郎新婦を待っていた。
これから2人が一緒にチャペルを出てきて、ブーケトスが行われる。

参列者の中の独身女性はどうやらブーケトスを心待ちにしていたようで、キャッチしやすそうな場所はどこかと話しているのが聞こえてきていた。
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