キミと過ごした、光輝く270日間のキセキ【2.19おまけ追加・完結】
参列者の視線が、一斉に私の方へと注がれた。

でも……さっきとは違う。
好機の視線なんかじゃない。みんな、優しい視線を私と姉へと向けてくれている。


「葵。黙っててごめんね? ずっと生きて、幸せになって欲しい。彼と」


そう言った姉は、ピンク色のローズブーケを私に手渡してくれた。

ふわりと香る、バラの花の匂い。

私はそれを受け取ると、姉の顔を見る。
姉は目に涙を浮かべながらも、私のことを優しい眼差しで見つめていた。


「葵、大好きよ。今も、これからも」

「お姉ちゃん……」


涙が、頬を伝った。

そうか。だから、ピンク色だったんだ。

初めから、私に渡すことが決まっていて。
私が小さい頃から好きな、ピンク色のバラの花にしてくれたんだ。

こんなときにまで、私のことを想ってくれているなんて。
『幸せになって』なんて、本来なら私が姉に向けて言う言葉なのに……。

なんて、優しいのだろう。


「ありがとう。私、お姉ちゃんの妹で本当に幸せです」


そう言うと、姉が私のことをぎゅっと抱きしめてくれる。

会場からは、盛大な拍手が沸き上がった。

あまり知られたくないと思っていた病気のこと。
でも、誰も私のことを笑う人なんて1人としていなかった。

姉がこの場を借りて病気のこと話したのも、きっとそれがわかっていたから。
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