先輩からの挑戦状〜暗号ヲ解読セヨ!〜
「ハァ……」
二月上旬、月斗はため息を吐きながら目の前にある紙を見つめる。これは一月に紫乃から渡された紙だ。月斗は、まだ暗号を解くことができていなかった。
数字の語呂合わせなのか、それともミステリーで登場するような複雑なものなのかと真剣に考え、色々思い付く限り調べてみたものの、全く解けない。
『暗号、全然解けませんよ!ヒントください!じゃないと、卒業式終わった後に桜木先輩のところへ行けないじゃないですか!』
解けなかったら、という焦りから月斗はそんなメッセージを紫乃に送っていた。すぐに既読がつき、返事が送られてくる。
『ヒントなら、私が書いた小説の中にあるはずよ!』
読書も執筆も大好きな紫乃の書いた小説は、百は余裕であるだろう。高校に入学する前の月斗ならば諦めていたかもしれない。だが、今の月斗は違う。読書も執筆も、そして紫乃のことも大好きな文芸部の部員だ。
『わかりました。片っ端から読んでいきます!』
そう月斗は送ると、まずは短編から読んでみようと紫乃の作品が並んだ棚を見る。そして、五十はありそうな短編に月斗は驚いてしまった。
「短編だけでこんなに……」
きっと、紫乃は毎日のようにここに来て小説を書いていたのだろう。月斗は目の前にある「ローマは一日にして成らず、でも恋は数秒で!?」と書かれた小説を手に取った。