先輩からの挑戦状〜暗号ヲ解読セヨ!〜
タイトルにローマとあるため、どこの国を選んだのかは月斗にもわかった。このお話は、恋人に振られ、仕事も失ってしまった女性が傷心旅行にイタリアに行き、ローマで立ち寄ったお店の店長に一目惚れされ、アプローチを受けるというものだ。甘く、情熱的な台詞がいくつも書かれ、読んでいて月斗は恥ずかしさを覚えてしまう。

「うわ、桜木先輩ってこんな台詞言ってほしいのかな……」

もしも、同じ台詞を紫乃に言ったなら彼女はどんな反応をするだろうかと月斗は想像する。小説の台詞だと気付くだろうか、それとも照れてしまうのか、暗号を解くヒントを探している最中だというのに、変な想像ばかりしてしまう。慌てて月斗は本棚から次に読む小説を手に取る。

フランスで仲間と共にパティシエの修行をする人の話、南アフリカで医師として働く人の話、韓国人の彼氏がいる人の話、アルゼンチンで暮らすことになった人の話、カナダへ旅行に行った人の話ーーー。

恋愛、青春、コメディ、ミステリーなど様々な幅広いジャンルで書かれた紫乃の小説の舞台は海外が多い。日本のお話であっても、必ずどこかに国名が登場する。

「海外、好き過ぎでしょ」

思わず月斗は笑ってしまう。トルコが舞台の小説が棚に戻し、次はどれを読もうかと悩ませる。紫乃の小説はどれも面白いのだ。

「う〜ん……。あっ、これにしようかな」

月斗が手に取ったのは、「世界探偵西園寺麗奈」というタイトルの本だ。タイトルを見るだけでジャンルはミステリーだとわかる。
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