愛しのプラトニック・オレンジ~エリート消防官の彼と溺甘同居中~
「ありがとう、真誉。面倒を見るなんて言っておきながら、俺の方が支えられてるな」

そう言ってダイニングテーブルに座り、いただきますと手を合わせる。

少しでも支えられていたら嬉しい。私の作った食事が血となり肉となり、彼の力になってくれますように。

祈るような気持ちで、私も正面の席に腰を下ろした。

彼はオムレツをぱくり。意外な味だったのか、目をパチリと瞬かせる。

「このオムレツ、いつもと違う? 納豆以外になにか入ってる?」

「ちょっぴりシソと鰹節を入れてみたの。夏だからさっぱりさせようと思って。あ、みぞれ和えをのせて味変してもおいしいよ?」

「さすが。手が込んでるな」

そうベタ褒めして、今度は和え物とともにぱくり。表情で満足度が伝わってきた。

「真誉はいいお嫁さんになるだろうな。素直だし、かわいいし、料理は上手だし」

最大級の賛辞をもらい、思わず「ふふっ」と声をあげた。

同時に胸がちくりと痛む。

友人でもない、恋人でもない、兄妹でもない、不思議な関係の私たち。

私をお嫁さんにしてくれるのは、きっと北斗さんではないだろう。

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